イベント : 頼山陽史跡資料館特別展「田中賴璋とその一門」開催
頼山陽史跡資料館(広島市中区袋町)では、2月8日まで特別展「田中賴璋(たなからいしょう)とその一門」を開催しています。
明治の終わりから大正期にかけて中央画壇で活躍し、竹内栖鳳(たけうちせいほう)や横山大観(よこやまたいかん)らに肩を並べる日本画の大家の一人であった田中賴璋。しかしながら、今ではその名を知る人も少ないかもしれません。頼山陽史跡資料館では、賴璋没後70年にあたる2010年に回顧展を開催しました。今回の特別展では、賴璋だけでなく、これまでほとんど取り上げられることのなかった門下生たちの作品も“発掘”しながら、近代広島の日本画壇を彩った賴璋とその一門の画業に改めて光を当てています。
田中賴璋(1866~1940)は、島根県邑智郡市木村(現・邑南町市木)の生まれで、本名は大治郎。幼少時より画を好み、17歳の頃には、萩へ出て森寛斎(もりかんさい)の薫陶を受けたといいます。その後は旅絵師として活動を続けていましたが、明治35年(1902)、一念発起して上京します。
川端玉章(かわばたぎょくしょう)に入門した賴璋は、“賴章”の号で作品を発表し、各種展覧会で優秀な成績を収め、玉章門下の俊英として画壇に確固たる地位を築いていきました。師玉章は大正2年(1913)に亡くなりますが、それ以後は、画号を「賴璋」と改めています。
賴璋は、山水画を能くし、特に滝を描いては他の追随を許さぬ名手として名を馳せました。自然の息吹と季節感を独特の筆致と色彩で謳い上げた賴璋の作品は、徹底した鍛練によって磨き上げられた画技と卓越した観察力に裏打ちされたものであり、今なお観る人を魅了してやみません。
大正12年(1923)の関東大震災の後、賴璋は広島の二葉里に移住し、八百田賴秋(やおたらいしゅう)、小林賴樹(こばやしらいき)、川上賴泉(かわかみらいせん)、中島晃璋(なかじまこうしょう)、島津賴潮(しまづらいちょう)ら多くの門弟を育てました。門弟たちもまた広島県美術展覧会(県美展)に精力的に出品し、審査員をつとめるなど、広島の日本画壇で活躍していました。
今回の展覧会開催にあたって、賴璋とその門弟たちの作品について情報提供を呼びかけたところ、多く方から情報が寄せられ、幸いにも戦災を免れた貴重な作品を紹介することができました。
本展では、田中賴璋とその一門の作品とその魅力を紹介しつつ、大正昭和期における広島の美術界の動向に迫っています。ぜひご覧ください。
※1枚目:溪山鳴滝図 田中賴璋筆 個人蔵
※2枚目:猛虎図 中島晃璋筆 個人蔵
(頼山陽史跡資料館 花本哲志)
【日時】平成27年1月6日(火)~2月8日(日)9:30~17:00
【休館日】月曜日(但し祝休日は開館し、翌火曜日が休館)
【場所】頼山陽史跡資料館(広島市中区袋町5-15)
【入館料】一般300円(240円)、65歳以上240円、小・中・高生150円(120円)
※( )は15名以上の団体料金
※土曜日は小・中・高生無料
【関連行事】
(1)展示解説会
日時:平成27年1月10日(土)・1月31日(土)いずれも13:30~
解説:岡原大崋(本展監修者、1月10日)、当館学芸担当(1月31日)
(2)「田中賴璋の画法に迫る」
日時:1月10日14:30~(予定)
実演・解説:岡原大崋(本展監修者)
会場:旧日本銀行広島支店3階フリースペース1
【問い合わせ】
頼山陽史跡資料館:082-542-7022
ホームページ:http://raisanyou.com