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森の沼―「愛と認識との出発」より―
(もりのぬま―「あいとにんしきとのしゅっぱつ」より―)
藍色の水の面に銀色の跡を劃して
かいつむりの真一文字に泳ぐを見よ
されど音を立てざるなり
この夕奇しき寂寥の情調に
もの皆は首を垂れて白く愁ふ(うれふ)
「白愁の町」という言葉があり、庄原がそれであるという。中国山地ぞいの小盆地にあるこの町に立つと、ふとその想いがよみがえってくる。町の人びとの憩いの場となっている上野池は、街の南にあたる小高い丘に、さまざまな樹々に囲まれながら、今も黙然と広がっている。彼の宗教的人間になる動機として、亀井勝一郎は生命の危機感、病者の自覚、罪の意識の3点をあげているが、それらが青春の思索の書として多くの若者を魅了した「愛と認識との出発」を生む源になったのであろうか。
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