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阿伏兎観音のウバメガシ
(あぶとかんのんのうばめがし)
沼隈半島の南端阿伏兎岬にある国重要文化財、磐台寺(ばんだいじ)観音堂にまつられている観音を阿伏兎観音と呼ぶが、それがお堂の通称となっている。この付近の海岸は断崖になっており、ウバメガシの群落がよく発達している。特に観音の北西側には大木があり、最大のものは、目通り幹囲3.1メートル、樹高約11メートル、枝張り東西17メートル、南北8メートルもある。この木は、県天然記念物「忠海のウバメガシ樹叢」中の最大木(胸高幹囲2メートル)を凌いでいる。沼隈町の海岸一帯に多いウバメガシは、その木の剛気と気宇を思わす姿と、昔からこの地方の人々に親しまれてきた。
ウバメガシは、伊豆半島以西の本州太平洋側、四国、九州、沖縄に分布し、主として沿海地域に生ずる。他の常緑カシ類と異って、葉は小さくて厚く、地中海地方に生ずるコルクガシに似ている。生長が極めておそくて材が固いので、この木で作った炭は良質で、備長炭(びんちょうずみ)と呼ばれる。火力が強く、しかも火持ちがよく、うなぎのかば焼きに適しているという。実(み)(どんぐり)は発芽しやすく、生垣、庭木としてよく栽植される。
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