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上高野山の乳下りイチョウ(かみたかのやまのちちさがりいちょう)

 上高野山新市の天満宮境内にあるこのイチョウは県内第1位の巨樹(雌株)で、県天然記念物に指定されている。目通り幹囲9.6メートル、高さ約20メートルで、多数の乳柱(乳房状突起)が垂れ下がり、地面に達して土中に入りこんでいるものも見受けられる。このようなイチョウの古木に見られる乳柱は細胞が軟らかく、デンプンを多量に含んでいて、局部的な栄養過剰に起因するといわれている。栄養の供給を必要とする実(み)(種子)がならない雄株に多いといわれるが、本樹のように実(み)のなる雌株でありながら乳下りの著しい木も少なくない。昔から乳柱の部分は乳不足の婦人に効用があるとされて、「乳出しイチョウ」と呼んでいる地方もある。
 イチョウ類は中生代ジュラ紀から新生代第三紀にわたって栄えた植物であるが、現存するのは一種のみである。中国に自生しているといわれ、日本へは鎌倉か室町時代に入ってきたと推定されている。本件のイチョウは、天平元年(729)、建御雷命(たけみかづき)をこの地に勧請の時神木として植えられたと伝えられている。
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