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向原のカタクリ群生地(むかいはらのかたくりぐんせいち)

 旧高田郡向原町長田(ながた)(現安芸高田市)にカタクリの群生地がある。農家の庭先に続いている草刈場で、所有者の不断の監視もあってか盗掘されることなくよく保護されている。4月上旬、足の踏み場もないほど密生した葉の間から茎を伸ばして咲く花の群が淡紅紫色のじゅうたんをくり広げる。双生(そうせい)した葉には紫色のまだら模様があり、強くそり返った6枚の花びらの間から、紫色のやくが雌しべをとり囲むようにして勢いよく突き出ている。葉も花も何とはなしにエキゾチックな感じで、早春、林縁の草地に一面に咲いている様は、メルヘンの世界から躍り出た妖精の群のようにもみえる。
 カタクリは、北海道から九州まで分布するが、関東地方以北に多く、四国、九州では極めて稀である。花後、葉は次第に黄変して6月下旬には枯れてしまう。草の命は短かくて2ヵ月ほどにすぎない。しかし、地下の鱗茎(りんけい)は多年生で、年々少しずつ深くもぐってゆく。鱗茎は長めのラッキョウに似た形で、デンプンを多く含み、昔はこれから片栗粉をとった。
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