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大朝の天狗シデ
(おおあさのてんぐしで)
旧大朝町(北広島町)の中心地より南西方7キロメートル余の所に海抜約1,000メートル(付近の集落との比高約500メートル)の熊城山(くまのじょうやま)があり、その東斜面、海抜650メートル内外の地域に、奇異な枝ぶりをしたテングシデの群生地(県天然記念物)がある。
ここを最初に調査した堀川芳雄元広島大学教授は、「樹幹枝椏は著しく屈曲棙転してその様恰も多数の蛇が体をくねらして乱舞するに似たり」と記し、枝條の屈曲性が著しいイヌシデの新変種とし、テングシデの和名をつけた。枝が曲がりくねった木が40本ばかり生じており、まさしく群蛇の乱舞を思わせる異観である。最大のものの胸高幹囲は2.6メートルである。堀川教授が昭和17年(1942)調査した報告書には、最大のもの目通り幹囲4.5メートルと記されているが、現在は枯死して見られない。
イヌシデには、葉の形が変ったナガバノイヌシデ、ヒイラギイヌシデと呼ばれる変種が知られているが、テングシデのような屈曲した幹枝をもつものは他に報告されていない。学術上極めて貴重な存在である。
土地の人々は「この木に登ると天狗に投げとばされる」、「木を傷つけると天狗の罰を受ける」などといって畏敬している。
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