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安芸の小富士
(あきのこふじ)
広島湾頭宇品の南約3キロメートルの海上に浮かぶ似島(にのしま)の北部にある主峰で、海抜278メートル。広島市街地から望む山容が富士山に似ているところからこの名がある。近世以来、広島の町の人々や、太田川を川舟で下って来た人々にめでられてきた。『芸藩通志』は「似島 宇品の南にあり、形富士に似たり、俗に小富士とよぶ、高四町、周九十町、居民五十戸あり」と記す。同書の別個所には「似島山」ともみえる。当時、似島は安芸郡仁保島村に属した。現在市街地に連続している宇品も、宇品島と呼ばれ、似島・金輪島(かなわ)・峠島とともに海上に浮かんでいた。
山麓部は、日清戦争を機に旧宇品港(広島港)を中心にして軍事施設化が進むなかで、陸軍検疫(けんえき)所が設置されるなど一定の軍事的役割を担った。原子爆弾投下時には10,000人ともいわれる負傷者が収容され、荼毘(だび)に付された人も少なくなかった。
瀬戸内海国立公園に含まれ、一見のどかにみえるこの小島も、激しく揺れ動いた歴史の跡を刻みこんでいる。
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