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帝釈峡(たいしゃくきょう)

 国定公園帝釈峡は、カルスト台地を帝釈川が、浸食してできた峡谷である。長さ18キロメートルに及び、石灰岩の絶壁がそそり立ち、わが国の5大名峡の1つにかぞえられている。
 上帝釈の古刹永明寺は、永延元年(987)行基菩薩の開基と伝えられ、本尊は帝釈天である。寺を圧するようにそそり立つ絶壁の裾を洗う川の上手には、深い洞穴があり、賽(さい)の河原と呼び、多くの石が積まれている。
 下流に至ると、奥行き200メートルの白雲洞という鍾乳洞、さらに下ると、世界三大橋の1つといわれる天然橋雄橋がある。渓水の争奪作用によって生じたもので、長さ70メートル、幅18メートル、高さ40メートルの大偉観である。
 雄橋、断魚渓と下っていけば、周囲24キロメートルの神竜湖に達する。大正の末期発電用貯水ダムとして建設された。作家火野葦平は、『帝釈峡記』の中で、湖底化以前の渓谷を見て、「絶景耶馬を幾つ持って来ても帝釈峡の壮麗に及ばぬ」と書いている。
 神竜湖の堰堤から下流6キロメートルの渓谷を下帝釈と呼ぶ。一般の探勝は不可能であるが、火野葦平の見た壮麗さが残る秘境である。
 さらに、旧石器から縄文時代に至る洞穴遺跡が、各所に点在し、古代史への夢をかき立ててくれる景勝の地だ。
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