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出雲街道と布野宿
(いずもかいどうとふのじゅく)
国道54号線を旧三次市から旧布野村に入るとにわかに山が迫る。布野川のせせらぎを聞きながら赤名峠に向かう。この間、旅人ならずとも、山々の風情や、村里のたたずまいに、旅心が湧いてくる。そんな街道筋であり、布野宿の素朴さが、昔の旅の素顔をのぞかせている。
出雲街道は、古代から陰陽を結ぶ幹線で、万葉の歌人柿本人麻呂、毛利、尼子の軍勢も通った道。近世期には、大森銀山の運上銀や銅を、赤名の住民は布野まで運んだ。明治・大正期には、三次や赤名へ往還する荷車でにぎわった。
国道と布野川をなうように、出雲街道は随所に遺存し、古い旅の歴史を語りかけている。特に今は廃路となった赤名峠越えの道。上布野の宿場を縫う往還などに、人々の暮らしや、息づかいに触れることができる。赤名峠山頂の石畳、国境番所跡、国境碑、五輪塔や供養碑なども点在し、往時をしのぶに足る。
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