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便坂峠
(びんざかとうげ)
江の川の東岸の旧作木村・布野村・君田村の尾根越え道は古くから開かれていたと思われるが、布野村と君田村間の道は比較的なだらかであるものの、布野村と作木村境は高くそびえた尾根によって遮られている。
作木村は江の川の流れの東に沿い、その川と400〜800メートルに及ぶ山とに押し付けられたような南北に細長い村である。この村から外界へは、川船でさかのぼるか、難所の多い川沿いの道を行くか、大津から森山・岡三淵を経て布野の横谷で出雲街道に合流するか、今1つは上作木から急坂の便坂峠を越えて、出雲街道の布野駅に至るかの4筋がある。川船を除いて、いずれも今も生きている道である。そのうち最も多く利用される便坂峠は、いつのころ開かれたかつまびらかでない。急坂のうえ屈曲が多く、江の川から一気に駆け登り、また一息に走り下りる感じのこの峠道は、頂上の比高が200メートルにも及び、冬季には積雪に悩まされる道ではある。
しかし、作木に住む人々にとっては、物資が行き交う生活の道であり、新知識を求めて旅立つ時の新しい息吹きに接するための門として、古くから親しまれてきた峠道である。
平成8年(1996)5月に新たに便坂トンネルが開通した。これにより布野と作木は一気に近くなった。
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