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雲伯路と新市宿
(うんぱくじとしんいちじゅく)
旧高野町新市は、周囲を700〜1000メートルていどの陰陽の分水嶺を成す山々に囲まれた海抜550メートルほどの、東西に細長い高原の小盆地にある町である。
そのような中国山地の脊梁部には、古くから山陽と山陰を結ぶ幾つかの峠道が開かれているが、陰陽を結ぶ雲伯路の街道筋にある新市は、中世末期に東方の蔀山(しとみやま)城下にあった上市に対して新しく開かれた。上市・新市ともに、かつては中国山地で盛んに生産されていた砂鉄の交易を通じて成立した市であったかと思われる。そのよう中で新市は、南は金尾峠を下って宮内駅(旧口和町)から三次に至り、北はなだらかな起伏の高原である和南原の国境番屋を抜け、王貫峠(おおのきだわ)を下り出雲国阿井駅(島根県旧仁多町)を経て山陰諸国につながる雲伯路、さらには出雲路の比和駅(旧比和町)にも通じるという交通の要衝としての地の利を背景に、次第に地域の中心的な市・宿駅としての地位を得たものであろうか。
今も旧街道筋の面影はよく残っている。
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