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直会峠
(すくえとうげ)
広島県と島根県邑智郡旧羽須美村の境にあるこの峠には、旅の安全などを祈願したのであろうか、小さなお堂に地蔵が安置されている。国境の際には、「従是南安芸国」という文字を刻んだ道標が建てられており、国境の峠であることが強く感じられる。
この道がいつのころから開かれたか明らかでないが、中世末期には存在していたと思われる。当時山陰の尼子氏と安芸の毛利氏は互いにその勢を競っていたが、天文9年(1540)尼子晴久が3万の軍勢とともに安芸吉田の郡山城を目指したのは、この峠道を越えてではないかと想像される。
近世には石見で産出した砂鉄が運ばれ、近代には出羽(旧羽須美村)の牛市へ通う牛馬が行き来した道であったが、往時の道幅は狭く、この峠道は難所であったと伝える。その後、大正時代には道路改修が行われ、さらに昭和初期にはバス路線も開通するなど、今もこの峠の役割は大きいが、ふもとの集落からやや傾斜の強い坂道をうねうねと歩いて登ると、何とはなしに懐しさを覚えるのどかな峠道である。
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