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松阪邸
(まつさかてい)
古い町並みが、寺山と本川に挟まれた地区によく保存されている。竹原は、慶安3年(1650)より塩田経営にのり出し、その富によって豊かな町並みをつくりだし、町人文化の高揚をみせ、頼一族をはじめとする多くの町人学者が輩出した。特に、上市・下市地区は江戸時代から明治にかけての町並みがよく残っているので、昭和57年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
中でも、松阪家住宅は、空き家になっていた豪商の邸宅を、竹原市が寄附を受け、大修理を施し、町並みの目玉として昭和59年(1984)5月から公開している。
松阪家住宅(地元では松阪邸と呼んでいる)は、間口七間、平入りで、屋根は本瓦葺きであり、てりむくり(照り起り)型の波打つような形をしている。大屋根の下の薄いねずみ色の漆喰(しっくい)塗り大壁には、塗り込めの窓、額縁付き菱格子の出窓がついている。屋根の形や表の造りに、独特な建築意匠を持っているが、高塀の上から、庭木の緑がのぞいており、重厚な町家にやわらかな雰囲気を与えている。この建物の建築年代は、祈禱(きとう)札が天保(てんぽう)6年(1835)から保存されているところから、19世紀の初め頃と考えられているが、その後、明治時代初めに全面的な改造が行われ、現在に至っている。
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