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吉原家住宅(よしはらけじゅうたく)

 尾道と尾道水道を隔てて対岸に向島がある。島の南部はなだらかな丘陵地帯で、斜面を利用して柑橘(かんきつ)類、野菜、花卉(かき)栽培を行い、北部は平坦地となっており、沿岸部に日立造船向島工場がある。
 吉原家はこの地の豪農で、江戸時代庄屋、割庄屋を務めていた。吉原家住宅(県重要文化財)は江奥地区にあり、かつて入江であった低地を見下ろす位置に、石垣を高く築き東向きに建てられている。
 住宅は、寛永11年(1634)火災にあったといわれるが、18世紀初めから19世紀のものまで29枚に及ぶ祈祷(きとう)札が保存されており、このことからも現在の母屋は19世紀初頭以前には建てられていたことが知られる。母屋は桁行(けたゆき)19.6メートル、梁間(はりま)は12.8メートルの麦藁(わら)葺きの入母屋造りで、母屋の周囲に長屋門、大蔵、納屋それに母屋建築当時築造されたといわれる庭園が配されている。母屋の間取りは、古材に残存する痕跡、梁(はり)下の枘(ほぞ)穴等から、よくもとの形をたどることができ、整形六間取りに土間を持つ一般的な形に復元することができる。土間中央に柱を建てず、二重の梁組で大きな空間を構成し、土間境に建具はなく、土間の格子戸や格子窓、その上部の小壁などがない古い農家の伝統をそのまま伝えている。
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