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磐台寺観音堂と客殿(ばんだいじかんのんどうときゃくでん)

 磐台寺は「阿伏兎(あぶと)の観音さん」の名で人々に親しまれ、本尊の観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)が阿伏兎岬岩頭上の観音堂に安置されているところからこの名がある。伝えによるとこの寺は暦応(りゃくおう)年間(1338〜1342)に覚叟建智によって開かれたが、一時衰退荒廃した。後に、老いた正直な漁師が、霊夢により阿伏兎岬の沖の海中から観音像を拾いあげ、岬の岩上に安置したところ、多くの人々の信仰を得るようになり、その評判を聞いた時の太守(たいしゅ)毛利輝元(てるもと)が、元亀(げんき)元年(1570)に寄進したのが現存の観音堂、客殿といわれる。
 観音堂には禅宗の伽藍(がらん)には珍しく和様で、海に面した岩頭上の強風を受けやすい位置にあるため、建物基部を強固にし、建坪を岩上にいっぱいにとり、丹塗りの縁を軒より張り出して、寄棟造り、本瓦葺きの屋根でおおっている。内部の格天井には藤井松林が百花図を描いており、周囲の壁面には慈母観音にちなんでか、母乳のでない人などの願いをこめた絵馬が、所狭しと掛け並べられている。客殿も同時期に造られたが、こちらは観音堂と異なり、禅宗の方丈建築の様式で造られている。
 これらの建物は、瀬戸内の自然に調和した見事な景色をつくりだしているところから、古くから歌に詠まれ、絵に描かれるなどしている。
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