広島県の文化資源画像

作木殿敷(さくぎとのしき)

 中国地方1の大河である江の川が、三次を出外れた所から深い谷を刻みつつ北上する東岸に、旧作木村の集落がここかしこに小さくかたまりつつ散在する。そのひとつ大津からの谷間の道を登り詰めた、標高400メートルばかりの山懐に岡三淵がある。摺滝山・三国山・女亀山などのほぼ800メートルの高い山々に囲まれたこの地域が、いつの頃から拓かれたかは定かでない。
 「殿敷」と呼ばれる三上家がこの地に居を定めたのは、文亀年中(1501〜04)のことと伝えている。今は人声をほとんど聞くことがなくなったこの家屋も、かつては地域の豪農であったことを示すように、ゆったりとした構えをしている。外門を抜け正面入口を入ると土間から台所へと続くが、その三和土(たたき)の部分は30坪にも及ぼうかという広さで、多くの人々が出入りしたであろうことを偲ばせる。室は表側にタマリエンを介してアガリハナ・ブツマ・床の間と続き、裏側は台所からカッテ・ナンド・オシイレ・オクナンドと連なっている。建築年は詳らかでないが、裏庭にたてられている土蔵には享保17年(1732)の棟札があるといい、床の間の先に便所が取り付けられている様子などから、ほぼ同時期のものであろうか。
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