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円通寺本堂(えんつうじほんどう)

 日本の寺院建築の様式には、和様(わよう)・大仏様(だいぶつよう)(天竺様(てんじくよう))・禅宗様(ぜんしゅうよう)(唐様(からよう))と、3様式を併せた折衷様の系統がある。南北朝時代以降においては、大部分の寺院建築が折衷様で占められているなかで、円通寺本堂は寺地の背後にある甲山(こうやま)城主山内直通によって、天文(てんぶん)年間(1532〜1555)に純粋の禅宗様として再建されている。
 本堂は三間3間脇の一重の入母屋造りで、屋根は古くは杮(こけら)葺きであったが、今は銅板葺きに改められている。石積基壇の上に立つそれは、禅宗様の例のとおり円柱に、その上下両方に粽(ちまき)があり、下端は礎盤が置かれている。正面三間の柱間は、禅宗様独特の桟唐戸で、この戸は藁座(わらざ)という別材で支えられている。桟唐戸とは、羽目板に框(かまち)や桟を縦横に組み合わせた戸で、その框の中央に稜線があるのは、不動院金堂のそれと同様古式を示している。本堂内部の柱は貫(ぬき)で連絡しており、和様のように長押(なげし)はない。頭貫(かしらぬき)の先端は拳鼻(こぶしばな)が刻まれている。屋根の軒を支えている垂木(たるき)は、二軒(ふたのき)といわれる二重扇垂木(おおぎだるき)になっている。
 薄暗く急な山道を登り、山門をくぐると本堂は目の前に黙然と立っている。備北山地の自然と静寂の中にあるそれを見ると、何か安らぎを感じる。
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