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賀茂台地の居蔵造り民家(かもだいちのいぐらづくりみんか)

 こげ茶の瓦を葺いた白壁の農家の美しいたたずまいが、西条盆地を中心にした、この地方の美しい特徴であるが、これは古くより生活の確立した要衝の場所柄のせいもあろう。しかし、芸藩通志にもこの地方に多く油瓦を製するなりと出ていて、この地の粘土による釉土瓦は丈夫なので、幕末より大正期にかけて、一気に茅葺きが瓦屋に改良される気運を作った。そうして、居蔵造りと称して、上8畳に下6畳、裏側も2間付き、それに土間の付く母屋にはつし2階が広く建て上げられて、母屋が出来、それに椽(たるき)側の廂(ひさし)が付くこととなる。後には上8、下6に更に6畳が付いて、三間流れとなり、土間付き重層入母屋の大屋根の立派な造りとなる。そうして、農家としての納屋、倉、門なども全て油瓦葺きに整えられて、時には作業納屋には2階部屋が設けられたり、裏2階座敷が整えられたりする。それらの農家構えは、油瓦の色彩と白壁と黒い柱などの木部とともに4周の丘陵地や田畑の緑とよく調和して、この地方独特の民家景観を作っている。しかもこの油瓦農家は明治中期より大正初期にかけて一挙に普及の度を進めたものであって、地域環境の美しくなるのも悪化するのも、実は30年内外、1世代で、いずれにでも転化してしまうことのよき例でもある。
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