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林家住宅(はやしけじゅうたく)

 林家住宅は、大聖院に続くなだらかな傾斜地の参道沿いの高台にある。このあたりは、厳島神社の社殿の背後地にあたり、今日滝町と呼ばれているが、元禄時代に著された『厳島絵図』に、既に現在の町並みに近い形が認められ、祠官・社僧の居住区となっていた。
 林家は、厳島神社のいわゆる宮島三家である棚守(たなもり)・上卿(しょうけい)・祝師(ものもうし)のうち、代々上卿職を継ぐ家で、そのため土地の人は、林家住宅のことを上卿屋敷と呼んでいる。かつては林家も対岸の廿日市の方に住み宮島へ渡っていたようだが、毛利元就(もとなり)の頃、島に定住するようになったと伝えられている。
 屋敷地は東西約48メートル、南北約19メートルの長方形の敷地で、西南に約2.7メートルの石垣を積み上げ、中央部の石段を登ると両袖(そで)付きの薬王門式の表門があり、門をくぐって進むと母屋に至る。母屋は切妻造りで、西妻に千鳥破風を配した屋根勾(こう)配の穏やかな建物である。奥行が長い武家屋敷風の趣を持った住宅で、南面に廻(まわ)り濡縁(ぬれえん)を設け、池のまわりに木々を配し、背後の山の自然をいかした築山は、建物とよくマッチしており、南面の各部屋からの景観を考慮して造られている。
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