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熊野町郷土館(くまのちょうきょうどかん)

 熊野は筆の町、“姉も妹も筆つくる”と、熊野小唄に歌われているように、かつては全戸数の9割が筆の生産に従事していた。
 「芸藩通志」の熊野村の項に、「居民農余行商の者あり」とあるが、零細な農山村だったため、昔から出稼ぎをして暮らしを立てるものが多かった。農閑期になると高野山の登山者の強力(ごうりき)や、紀州熊野地方の林業労働者として村を後にした。帰途は奈良地方の産物である筆や墨を仕入れ、行商しながら戻った。これが毛筆と村を結ぶ因縁となった。
 全国生産量の8割を占める広島県にあって、筆と郷土史関係をメーンとする郷土館が、昭和53年(1978)に熊野町に開館した。
 木造2階建て、赤瓦葺き、かつて、町の中心地にあった造り酒屋だったものを移築した。左手に土蔵があり、母屋と土蔵のしころ屋根は長く、共屋根となっており、外観が実に壮大に見える。
  展示は、筆関係では毛筆原料、製筆用具、化粧筆、筆問屋の復元、行商用具。書道関係では、書作品、書道用品など。郷土の歴史を伝える古文書、町内に残る江戸時代からの各種古書。農耕、生活用具など。筆と書道文化については、特に充実している。
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