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黒い雨(くろいあめ)

 「黒い雨」は、井伏鱒二が同郷の知人、重松静馬の書きためた原爆体験手記「炎の記」全3冊をもとに書いた長編で、昭和41年(1966)に刊行された。
 淡々とした独特の語り口の中に被爆者への温かいまなざしがあふれた本格的な原爆小説として評判を呼び、野間文芸賞を受けた。
 物語は、被爆した主人公と姪が備後の山間の村に帰った後、“黒い雨”をかぶっていた姪に原爆症の症状が現れるまでの、主人公の不安や苦悩を描く。当初「姪の結婚」という表題で書き出され、後に「黒い雨」と改題された経緯があるとおり、姪の縁談にまつわる悲劇を、広く後遺症の問題としてとらえ、原爆体験そのものを文学として形象化しようとした作者の熱意が全編にみなぎっている。
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