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黒雨(くろあめ)

 「黒雨」は芥川賞候補作家の斎木寿夫が、被爆者からの取材見聞をもとに、被爆直後の焼け跡をさまよう人間群像を描いた力作。昭和30年(1955)刊。「その惨禍のなかで、人間性を確ととりもどすことを作品にした」と自ら後記で語っている。
 宇品の陸軍輸送司令部の軍属だった主人公が、市内の救助活動に出動した隊列から離れ、妻を捜して黒い雨の降る焼け跡を歩き回るうちに、同じように妻を捜す憲兵や女学校教師、友人を捜して歩くカメラマンと知り合う。その4人が互いに投げ合う言葉の形で、戦争の無意味さ残酷さ、神への不信などが語られる。そして最後に、似島の収容所で背中が火ぶくれになった妻を捜し当てる。
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