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青春の碑(せいしゅんのひ)

 「憲吉の批評は意外にやさしく、私のたどたどしいまでに稚ない作品の中に、わずかな長所を指摘して行くいたわりにあふれていた。
私の歌はたちまち原型を失ってしまわなければならなかった。・・・・・・それでも憲吉の、私のような少年の作品に対しての意外な批評の真摯さにひそかに感謝した」
 旧制広島高等学校2年の作者が中村憲吉を仮寓(広島市佐伯区五日市)に訪ねた時の描写である。
 作者は朝鮮半島の父母と別れ、故郷・広島で旧制の中・高校時代を過ごした。満州事変から日中戦争へと日本が傾斜していく時代、広島に生きた一人の多感な青年が何を見、何を感じたかがリアルに描破されている。
 作者は東京工業大学へ進み広島を離れ、兵役で中国大陸を転戦するが、近藤短歌の原点は広島にあることを示唆している。病患で帰国し、広島に原爆が投下されたことを東京で知る。昭和20年(1945)の秋、作者が廃墟のヒロシマを訪れるところで「青春の碑(二部)」は終わる。
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