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海に立つにじ(うみにたつにじ)

 「海に立つにじ」は「ある広島の少女の物語」の副題を添えた、大野允子作の童話。昭和40年(1965)に発表された。童話の形式でやさしく書かれてはいるが、原爆に被爆した一人の少女が死に至るまでの“生の軌跡”をたどり、物語は重くて痛々しい。
 少女の名は島本緑。旧広島県立第一高等女学校1年生で、学校の図書室で被爆、両親と弟も被爆死、一人生き残った緑は祖母宅へ引き取られ、転入学した島の女学校に通いながら原爆症と闘う毎日。先生や友人、医師、祖母たちの励ましで生きる喜びをつかもうとする。しかし白血病の進行はどうすることもできず、クラス全員で輸血することが決まった終業式の日、緑は島の上にかかったにじの橋を登っていく夢を見ながら、十四歳の短い一生を終わる。「かあさん、この日記帳を、かあさんへの日記とよぶことにするわね」と書いた灰色のノートを残して・・・・・・。
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