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渡辺直己歌集(わたなべなおきかしゅう)

 照準つけしままの姿勢に息絶えし少年もありき敵陣の中に
 頑強なる抵抗をせし敵陣に泥にまみれしリーダーがありぬ
 “幻の歌集”と呼ばれた「渡辺直己歌集」<昭和15年(1940)刊>の中にある。作者、渡辺直己は呉一中から広島高等師範学校卒、呉市立高等女学校に奉職中、日中戦争に応召、昭和14年(1939)天津で31歳で戦死。「渡辺直己歌集」は友人の手で編まれた、その遺歌集である。
 第二次大戦中、戦線に立った将兵の中に、短歌を記録にとどめた多くの作者が居たことは、すでに明らかになっているが、敵兵へのあからさまな愛情や、戦争の惨禍の実相や、戦争そのものへの批判や反省が盛り込まれた1冊の歌集が、きびしい検閲をかいくぐって刊行された事実は意味深い。
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