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西行・和歌
(さいぎょう・わか)
波の音を心にかけて明すかな
苫もる(とまもる)月の影を友にて
西行(さいぎょう)が、志すことあって安芸の一宮(いちのみや)厳島神社へ詣でる途中、高富浦で、風に吹き止められて、時を過ごしているとき、苫を葺いた屋根からもれる月を見て詠んだ歌で、「山家集(さんかしゅう)」に収められている。
高富浦は、高飛山(175メートル)の東麓の海に比定される説が有力である。かつては、多賀登美を称していたが、山名が高飛に転じたという。この辺りは風待ち・潮待ちの適所でもあった。
西行は、当初佐藤義清(のりきよ)といい、北面の武士として鳥羽上皇に仕えていたが、保延6年(1140)、23歳で出家し、以後約50年間、諸国を旅した。初め円位、後に西行と改めた。「古今集」「千載集」「新古今集」などの勅撰和歌集に252首が収められている歌人でもあった。
厳島神社では
もろともに旅なる空に月も出て
すめばや影の哀れなるらむ
と詠じた。都で見る月は常であるが、旅に出て見れば哀れに思えるとの意味である。
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