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しがらみ・他(しがらみ・ほか)

 土間(どま)のうへに燕くだれり梅雨ぐもり用(よう)もちて今日は人の来らず
 中村憲吉の第3歌集「しがらみ」は、この歌で始まる。大正6年(1917)作。
 憲吉の作歌を時代別に分けると、鹿児島時代、東京時代、第1次帰住時代、大阪時代、第2次帰住時代の5つに区分できるが、「しがらみ」は、その第1次帰住時代に当たる。大学卒業、結婚、そして短い東京在住を経て、故郷布野村(現三次市)に帰住したのは、大正5年(1916)。それから大正9年(1920)に西宮に移住するまで、故郷の風物を歌い続け、その”寂”の歌風を完成した。
 憲吉は、この後大阪で新聞記者を勤め、大正15年(1926)家務のため再び帰住、病を得て昭和9年(1934)尾道の仮寓で、46歳で没した。その第2次帰住時代の静謐(せいひつ)・円熟の作の数々は、遺歌集「軽雷集以後」に収められている。
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