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ブランデン・詩(ぶらんでん・し)

 心やさしい神が ここに 山腹の松林の間に 一軒の家を与えてくれたら何とうれしいことか ここから私はよくながめることだろう アーチ形の鳥居が うしおの上に しろがねの波の上に赤くそびえ立つのを また龍頭の船が静かな海峡を渡るのを―-
 心やさしい神が もし ここに安息所を与えてくれさえしたら・・・・・・(福田陸太郎訳)
 この詩は、「宮島」として知られているE・ブランデンの作で、宮島の平松公園にはその詩碑が建てられ、広島市立中央図書館前庭にある「ヒロシマ」の詩碑とともに、広島の多くの人々に親しまれている詩である。宮島の高見から厳島の大鳥居等を眺めた風景を歌った「宮島」は、イギリスの詩人ウィリアム・コリンズの「夕べに寄せる歌」を模して書いた空想で、原題は「MR COLLINS AT MIYAJIMA 1959」となっている。それはイギリス自然詩の伝統に立ち、その田園をテーマとした詩風が脈うっており、緑豊かな木の間越しに望まれた紺碧の海と、朱の鳥居の織り成すエキゾチックな美しさを、国の枠はもちろん西洋・東洋の文化圏を超えた豊かな感性・知性によるこの自然賛美の詩は、「ヒロシマ」とは異なった感動を呼んでいる。第2のラフカディオ・ハーンと言われるように、彼の深い日本理解によって生みだされた詩のひとつと言える。
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