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あゝ江田島(ああえたじま)

 「古鷹山の頂上にひとりぼっちで立っていると、私の視野のひろがりのうちにどこからともなく吸いよせられ、鮮明にかたちをうかびあがらせてくるものがあった。私はそれらのものを、亡霊といったふうな言葉ではよびたくなかった」
 敗戦とともに海軍兵学校を去った青年が十余年ぶりに江田島を訪れ、兵学校生徒時代を回想する。
 旧海軍賛歌の視点から兵学校を扱った作品は多いが、この作品は、戦時という異常な時代背景の中で青春期を過ごす青年たちの生きざまをドライな筆致で追っている。
 作者は「人間を見る場合、一つの基準のようなものが、いつのまにか出来上がってしまった。それはその人がどういう戦争体験を持っているか、ということによって決定されるのである。ただしこれはその人物に対する価値判断とは関係がない」と書いている。
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