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牧野富太郎・俳句(まきのとみたろう・はいく)

 布にすりし昔の里やかきつばた
 植物学者、牧野富太郎は前後2回、昭和8年(1933)と昭和12年(1937)に植物研究のため山県郡芸北町(現北広島町)を訪れている。八幡高原でカキツバタの大群落を見つけたのは昭和8年のこと。のちにみずから「植物記」<昭和18年(1943)刊>で「カキツバタの花でハンカチを染めた」と語っているから、その時の作であろう。俳句はこの人にとってほんの手すさびであったかも知れないが、暗い世相を忘れさせるような山野の草花を前に、ほっと一息ついたようなのどかさを感じさせる。
 八幡高原は湿原の植物や高山植物の宝庫として知られるが、自生のカキツバタはもうわずかになってしまった。
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