広島県の文化資源画像

振り鍬(ふりぐわ)

 入浜式塩田の沼井の側に盛られた撒砂を地場へ撒く時に用いる鍬。この鍬をうまく使用するようになるには熟練を要し,腰と腹を使い,柄の上を逆手に持ち,打ち込むと同時に振り撒くのであるが,前後左右同量に,また砂が溝に落ちないように散布するには3〜4年の年季を要した。このほか鍬には,地場に撒いて塩がついている砂を沼井にすくい込むのに便利なように,沼井の近くに寄せるために用いる「寄せ鍬」,寄せ鍬で寄せてある撒砂を沼井へすくいこむ幅57センチ程度の中広の鍬である「掬い込み」,沼井の中の砂を沼井の外側へ掘り出すための「沼井堀鍬」,沼井に撒いた砂に筋をつけ乾燥を早めるために用いる「手引き」があった。「手引き」は,横に長く2メートルの松の台に30センチの鉄(昔は竹)の爪を27本つける。引き方に,たて・よこ・大なばえ・小なばえの4種類があった。これらの鍬の材料は桜が主で,鍬により刃先に鉄を風呂形にはめ込んだ。柄は椋か樫で,尾道の塩業組合がまとめて仕入れており,使う者の体格や好みによって竹原の業者が細工をした。それぞれお気に入りの業者を決めて修繕などをまかせた。
03003.JPG

前のページへ戻る