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(こと)

 琴はわが国の伝統的な楽器の最たるものであろう。
福山の琴の生産は現在全国生産高の七割以上もあって、その優れた音色、甲の木目の美しさ、装飾の華麗さは年季を入れた琴師の手づくり技術によって生まれている。
琴や三味線などの管弦の遊芸は、代々幕閣の要職にあり、江戸詰の多かった福山藩が上方の歌舞音曲を城下町に伝えた。また優れた琴や三味線の演奏家を輩出している。なかでも幕末から明治にかけては、盲目の葛原勾当(くずはらこうとう)や吉沢検校(けんぎょう)などを生み、多くの弟子を養成している。そこでは、琴、三味線の需要が多く、早くから琴づくりが行われていた。福山在の古くからある家には当時の琴が秘蔵されている。明治の初め福山の琴職人岩本敬助(敬琴と署名)の技法を受け継いだ牧本信次郎・正雄父子はこれを工場生産に発展させた。
現在企業数8社、従業員100有余人である。一つひとつの琴は最終的には何10年と修業を積んだ名人芸に依存している。その音色や琴の造形と装飾美は、まさに伝統工芸の極致というべきであろう。
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