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備後一宮節分祭(ほら吹き神事)(びんごいちのみやせつぶんさい(ほらふきしんじ))

 毎年2月3日の節分の夜、備後一宮・吉備津神社で行われる。”ほら吹き神事(放談会(ほうだんえ))”である。夜空を焦がす大たき火の周囲をぐるりと取り巻いた参拝客は、申し合わせたように一杯機嫌、方言お構いなしの大ボラを吹く。ホラの輪に入れるのは農民や町人、旅人とだれでもよい。ホラを聞くのも自由だ。参拝客は、奇想天外な大ボラに時のたつのも忘れて一夜を明かす。
日がとっぷりと暮れた午後七時過ぎ、どこからともなく参拝客が集まる。参加者は、本殿で五穀豊(ほう)じょうを祈った後、お神酒(みき)をいただいて身を清める。酒がすすむにつれてリラックスムード。小さかったたき火も、聴衆の増加とともに大きくなる。火勢を増したたき火の周囲を参拝客やホラ名人が取り囲む。やがてホラ吹きの常連や飛び入りの参拝客が、思い思いに得意の放談を披露、日ごろのうっ憤を晴らす。神社の森を焦がす大たき火の熱気と参拝客の爆笑の渦は壮観である。
ホラの内容がまた面白い。「わたしは大蔵大臣だ。一兆円なんてケチな減税はやらない。百兆円減税じゃ。わしにやらせれば不況は吹き飛ぶ」−。聴衆からすかさず「あんたに任した」とヤジが飛び、世相を風刺したホラに混じってお色気話もちらほら。ユーモア溢れる奇祭である。
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