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御弓(おゆみ)

 御弓神事は、瀬戸内海中央に突き出す沼隈半島の南端に位置する福山市沼隈町能登原の八幡宮境内で行われている。かつては旧暦1月7日に行われていたが、昭和48年から新暦1月3日に定着した。年の改まった清浄な空気を破って、弦音(つるおと)が境内に響く。いかにも新春らしい神事である。
御弓の準備は12月10日から始まる。能登原の本谷・下組・立河内・鞆路・白浜・桜の6地区から、毎年2地区が当番を引き受け、それぞれの地区から射手と矢取りの少年を1人ずつ選ぶ。射手のうち年長者は「前弓」、若年者は「後弓」と呼ばれ、弓の練習を続けるほか、大みそかの夜、水ごりをとり、夜明け前に斎戒沐浴(さいかいもくよく)して本番に備えたが、最近は簡略化され弓の練習1日のみとなっている。
御弓の当日は、最後の潮ごりをとり、裃(かみしも)を着て八幡宮へ向かう。的は直径二尺五寸(約75センチ)。十二間(約22メートル)離れ、先弓、後弓の順に、それぞれ16本の矢を射る。矢を拾うのは矢取りの仕事。回数を数える箸(はし)を盛り土に立てる。矢が命中すれば大太鼓を打ち鳴らす。
とりわけ最後の矢は乙矢と呼ばれ、命中すれば五穀豊(ほう)じょうなどの吉相として喜ばれる。弦は厄除(やくよけ)になるといわれ、家宝として保存する住民が多い。
神事は一般に広く開放され、200人前後の見物客が訪れる。終えてからは、住民も参加して弓の競技会が行われる。江戸時代、非常に盛んになったといわれ、このころに裃などを新調したと伝えられている。
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