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能登原とんど(のとばらとんど)

 瀬戸内海を見下ろす阿伏兎(あぶと)岬に建ち、奇観で知られる国重文・磐台寺観音堂(阿伏兎観音)の地元・能登原地区に伝わる同観音への奉納行事である。毎年1月の第2日曜日、高さ10メートル近いワラ飾りのとんどがきらびやかに飾りつけられ、田園地帯を練り歩く。正月の風物詩として知られている。
とんど作りのため、子供たちは冬休みに入ると同時にワラ集めなどの準備を始める。本格的な作業は正月4日から。とんどを出す本谷、下組、立河内、鞆路、白浜、桜の6地区では、ワラをたたき、土曜日夜から日曜日朝にかけて組み立てる。
とんどは、木材をやぐら状に組み、表面にワラをつける。上部には弓と矢を形どっている。正月のしめ飾りなども材料にする。青年たちが本体をかつぎ、子供は支え綱を持ち、各地区を練り歩きながら能登原小グラウンドに集まる。六基が寒風に揺れながらグラウンドで勢を競うさまは圧巻である。
この後、とんどは各地区に帰り、地域住民の手で焼き払われる。古くなったお札やしめ飾りも一緒に燃やすが、書き初めの習字を火にかざし、高く舞い上がれば字が上手になると言われる。またこの火で真っ黒に焼いたモチを食べると、胃腸が強くなるとも、風邪を引かなくなるとも伝えられる。古老のなかには、この火を木切れに移して自宅に持ち帰り、灯明の火種として使う人もある。
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