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お手火神事(おてびしんじ)

 日本三大火祭りの1つとして、瀬戸内の古い潮待ち港、福山市鞆町の沼名前(ぬなくま)神社に伝わる。燃えさかる重さ150キロの大たいまつ(大手火)を氏子衆が担ぎ、本殿への石段を上る姿は、海の男の勇壮な心意気を伝える。旧暦6月4日に近い土曜日に行われ、祭りが終われば、夏である。
祭りの神事が進むにつれ、午後6時に一番太鼓、同7時に二番太鼓が境内に鳴り響く。同8時、三番太鼓がひと際高く打ち鳴らされる。火打ち石でともされた”神火”が、白装束の世話役に守られて本殿から石段を駆け下り、三体の大手火に移されると祭りはクライマックスに達する。
大手火を担ぐのは、同神社の氏子衆。「ワッショイ、ワッショイ」。頭から水をかぶり、長さ4.2メートル、周囲1.8メートル、重さ150キロの大手火とともに45段の石段を上り本殿へ向かう。降りかかる火の粉とともに、右に左に大きく揺れ、小手火に火を移そうと待ち構える参拝客から起こる「ワーッ」という叫び声が、神社の森を揺るがせる。
境内は地元だけでなく県東部や岡山県南部などから訪れた参拝客で埋まる。夜の闇に浴衣姿の家族連れや金魚すくいなどの露店が浮び上がり、夏の風物詩を描き出す。家内安全や無病息災を願って参拝した市民は、帰宅後、街の周囲をご神火を移した小手火で払い清め、大手火の燃えかすを自宅の表口に打ち込んで護符にする。夏はすぐそこに来ている。
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