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精霊流し(しょうろうながし)

 延命地蔵菩薩を本尊にする古刹地蔵院(真言宗)が、地蔵菩薩のご縁日に、西方浄土へ向けて約千個の灯ろうを海に流す。瀬戸内ならではの精霊送りである。生口島と高根島にはさまれた幅約160メートル、長さ1.6キロの夜の瀬戸田水道に、7色の灯ろうが、光の帯となって流れていくさまは、夏の風物詩というにふさわしい。昔は先祖供養の一つとして各戸毎に流し、数もせいぜい50個から100個ぐらいだったという。それが大正末から同寺住職の呼びかけなどもあって、宗派を超えた行事として年々、盛んとなり、現在は水道の中央に浮かぶ数隻の漁船からまとめて流される。灯ろうは、麦わらの束を十文字に組み、十字の先端四すみに竹を立て、「先祖の霊」「供養」などを書いた紙をはり、中央にロウソクを立てる。用意した灯ろうを全て流し終わると、ちょうちん50個で飾られた長さ約5メートル、幅約2メートルの竹で組んだ「ちょうちん船」2隻が、西方浄土へのしんがりをつとめ、精霊送りのフィナーレとなる。旧暦7月23日が、潮の流れが西に向かうことと夕方から夜にかけて干潮になることから、ほとんどこの日に行われるが、暦の関係で9月にずれ込んだり、潮流の関係で旧7月9日ごろになったりする。精霊流しの夜、瀬戸田水道に面した広場では、浴衣姿の婦人会や青年団、子供たちが、櫓を中心に2重、3重の輪になって地蔵通りなど盆踊りを夜遅くまで踊り、行く夏を惜しむ。
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