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えば(負子)
(えば(おいこ))
「えば」という背負い運搬具は、倉橋、音戸、旧呉市の沿岸部などのごく一部で使われている。県の中北部に多い「肥(こえ)負子」、「どろ負子」、芸北地方でいう「トンノス」、あるいは県内で、「巻き負子」といっているものとは一風変わった構造をしている。
「えば」とはよくいったもので、蜘蛛(くも)の糸巣のことを、エバとかエギという地方がある。芸南では、エバというところが多い。「えば」という負子は、蜘蛛が巣を張った姿に似ているところからいう。
えばは、木負子の背負いやすさと、巻き負子の容器としての利便性がうまく組み合わされたもので、段々畑の運搬具として発達した。骨組みは、モロギ、木負子の方は、杉、モロギなど。容器となる部分のモロギは、折り曲げて整形する。段々畑を耕作する農家の野小屋には、曲げて固定した素材を乾かしているのをよく見かける。ほとんど自家製である。
容器となる部分は、しゅろ縄で編んでいる。段々畑で発展したものだけに、小型で、背中の上部に荷の重心がくるように作られている。風土が創造した芸南地域独特のものといえよう。
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